幼少期
- 2006年 愛媛県愛南町生まれ。
- 幼少期よりプログラミング・科学・教育に関心を持つ。
Representative Profile
東京大学教養学部理科一類 / Ubunture 代表
愛媛県愛南町。山と海に囲まれた小さな町で、私は育ちました。大きな図書館や公園もなかったため、幼少期の遊び場はもっぱら自然でした。季節の気配を読みながら、道具の作り方や罠の扱い方を祖父から教わりました。次第に自分でも要領がつかめるようになり、エビや魚、山菜を自分の手で獲れるようになりました。家の前の川や裏の山は、まさに最高の遊び場でした。自然の中にはたくさんの素材がある一方で、人工物はほとんどありません。だからこそ、「無ければ創ればいい」と、あるもので工夫してつくる――そんな昔の人の知恵に、自然と触れる日々でした。そして、同世代の子どもたちと遊び、地域のおじいちゃんおばあちゃんにも温かく接してもらい、とても幸せな時間を過ごしていました。
ただ、その世界はどこか狭く感じていました。町の輪郭が、自分の世界の限界を形作っていたのです。そんなとき、世界を一気に広げてくれたのが、インターネットとコンピュータでした。ひとつ検索するだけで、知らなかった世界に足を踏み入れることができ、最先端の研究や面白い科学に触れることが本当に楽しかったのです。コンピュータを使えば、自分の好きな世界を表現することができる。特にプログラミングには夢中になりました。頭の中に浮かんだアイデアが、コードを通して画面の上に実現する。ICTを通じて、自分の世界は大きく広がっていきました。
町のはずれにある保育園から、少し大きな小学校へ。それでも物足りなさを感じていた私は、自らの意思で町を出て、松山の中学校へ進学しました。そこから、自分の世界はますます広がっていきました。友達を連れてさまざまな場所へ出かけ、歩き、自転車に乗り、バスや船を使い、時には泳いで、県を越えて山へ、海へ。本当に楽しく、心が踊るような毎日でした。幼い頃から、とにかく新しい世界に触れることが何よりの喜びでした。
高校時代、ICTの力を活かして様々な活動に取り組みました。
そんな高校時代、友人の紹介で訪れたファミリーホーム(様々な事情で家庭で暮らせない子どもを、家庭に迎え入れて養育する場)で、ある男の子が私の持っていた科学の本を夢中になって眺めていました。本当に目を輝かせて読んでいたのです。その瞬間、私は「学び」とは誰もを笑顔にできる力なのだと知りました。たった一冊の本、一つの学びが、辛い過去を抱える子どもに笑顔をもたらす。その姿を目の当たりにし、かつて自分の世界を広げてくれたあの喜びを、もっと多くの子どもたちに届けたいと強く思うようになりました。
ただ、資源には限りがあります。私の町にも図書館はありませんでしたし、すべての地にすべての知を届けるには限界があります。だからこそ、世界を変えるのは、そして実際に変えているのは「技術」だと私は信じています。インターネットやAIによって、より多くの人々に知識を届け、新しい世界への扉を開くことができる。教育をすべての人に届けるには、革新的な技術と、それを扱う適切な能力が必要だ――そう感じた私は、東京大学の工学部に推薦入試で進学しました。
大学に入ってからは、さらに活動の幅を広げました。たとえば能登での教育活動。地域格差に目を向け、NPO法人や学生団体のもとで、高校生に希望を届ける活動に取り組んでいます。また、dentsuとの社会課題解決プログラムでは、学術・技術・環境・歴史・スポーツなど多様な分野に触れる機会を得ました。さらに、私自身が主催となって、東京大学に「教育を基礎から学び、議論する場」をつくるべく、「探究学習を考えるゼミ」を立ち上げました。
そんな中、南アフリカに留学していた友人のRiko Kasai(後の現地コーディネーター)から、ヨハネスブルグの教育現場の実情を聞きました。同じ地域内で、ICTにアクセスでき、充実した学びができている子どもと、そうでない子どもがいるというのです。私自身も調べてみると、そのような格差を生み出す構造が存在し、子どもたちの将来にも大きな影響を及ぼすことが分かりました(詳細は 「ヨハネスブルグにおけるICT教育格差と国際比較」 参照)。
これはもう、自分が動くしかない――そう強く思いました。ICTが自分の人生を変えてくれたのなら、次はその力を次の世代に届ける番だと。そう思いを語ったところ、ICT・国際協力・国際情勢・教育に関心を持つ多くの友人たちが集まってくれました。彼ら・彼女らの共感、そして多くの方々からの助言と支援を受けて、学生団体「Ubunture」が誕生しました。幼い頃、自然の中で「無ければ創ればいい」と教わったように、いま目の前にない未来なら、自分たちの手で創ればいい――その思いが、活動の原点になっています。そして今、私たちは「共に創る未来」に向けて、南アフリカでの実践に挑もうとしています。
21世紀に入っても、戦争や紛争は絶えません。でも、その原因の多くは「相手の世界を知らないこと」にあると私は思います。だからこそ、「知る」ことは人間にとって絶対的に必要な力なのです。そして「知る」ことは、本来とても楽しいことです。今までと違うもの、自分と違う人を知ることは面白いこと。つらいとき、自分の小さな世界に閉じこもってしまえば、誰だって生きづらくなる。だからこそ、世界を広げる力――それは単にGoogleで検索する力でも、TikTokを見る力でもない。「ICTを自分の手で使いこなす力」を子どもたちに届けたい。そのような“生きる力”と“他者を理解する知性”を子どもたちに届けること――それが私の人生の目標です。そして、この活動はその夢への第一歩です。
Ubunture代表:澤近 大地
Ubunture 現地コーディネーター(南アフリカ・ヨハネスブルグ)
African Leadership Academy唯一のアジア人留学生として、アフリカ全土から集まる学生と寮生活を送っている。
2008年山梨県生まれ。コロナ禍の中学1年生の時に学校から配布されたPCをきっかけに、興味のあることを調べ続け、WOTA株式会社などへの企業訪問やNGO団体イムアイへ参画。はじめの一歩で出会った人たちから、世界が広がり、デンマークの製薬企業Novo Nordisk社主催サイエンスキャンプに最年少で日本代表選出されるなど、グローバルに挑戦を続けている。2023年自身が創設したNGO団体ユリフードでの食を通じたコミュニティ形成の活動や文科省のトビタテ留学JAPAN10期生としてインド工科大学で実験を行った天然凝集剤の開発の研究成果を認められ、Google元CEOによる世界的な奨学金コンテストRise Fellow 2024に5万人の応募者の中から100人の受賞者に唯一の日本人として選出。ASSIST Scholar財団から全額奨学金を受給して、3月に都立西高校を退学し、現在初の長期海外でヨハネスブルグに留学中。世界中での体験を振り返りnote記事で、発信し続けている。
私はコロナ禍に文科省配布のPCを自由に使えたことで、好奇心に従って今までは見えなかった世界を経験しています。部屋の片隅で、留学生の発見に溢れるブログを眺めながら、どうしたら私も知らない場所へ足を踏み入れられるのか調べ、数年間試行錯誤を続けた結果、その夢が叶ってこの夏から初めての海外での生活が始まりました。思いがけず、南アフリカに来て過ごす毎日は想像以上に驚きが重なり、特に道端で当たり前のように広がる格差は、目に見えないICTという分野においても大きな隔たりが残っていることに衝撃を受けました。
ICTというひとつのきっかけから好奇心に火がつき、自分の世界が全く新しいスピード感で広がっていく。私たちが当たり前に持っているそんな可能性を、すべての子どもたちに届けたい。そう思って、教育に想いがあるUbunture代表の澤近大地に声をかけました。
私は世界で身を持って体験した学びを日本に持ち帰り、新しいレンズを通して見つける本来の良さと融合させる、そんな文化の継承者になりたいと考えています。Ubuntureでは留学先の南アフリカと日本の協働の架け橋になり、私なりの還元の仕方を手探りで形にしていきたいです。
私たちUbuntureは、ICT教育を通じて「学びの自由」と「夢を見る力」を世界中の子供たちに広げる活動を行う東京大学発の学生団体です。
Ubuntu(ウブントゥ)はズールー語で「あなたがいるから私がいる」という、思いやりと相互扶助の哲学を持つ言葉。この理念にFuture(未来)を重ね、多様な人が「持ち寄って」関わり、社会課題の現場に役立つ学びを共に創る——その姿勢を名前に込めました。
ICTを通じて、世界中の子どもたちに「学ぶ自由」と「夢を見る力」を広げていきます。