生い立ち
- 2006年愛媛県愛南町生まれ。
- 幼少期よりプログラミング、科学、教育に関心を持つ。
東京大学教養学部文科一類2年 / Ubunture 代表
都市・農業での開発と貧困をテーマにしたフィリピンでの国際研修への参加や、ボストンと東京で学生会議を企画する学生団体での活動を通じて、国内外の学生と協働してきた。Ubuntureでは昨年の立ち上げ当初から活動し、資金調達や教材づくり、現地渡航を通して教育協力のあり方を模索している。国や立場を越えて人と人をつなぎながら、子どもたちの可能性が広がるような国際教育協力を目指している。
東京大学教養学部理科一類 / Ubunture 創設者
愛媛県愛南町――私の故郷は、山と海に抱かれた小さな町です。近くに大きな図書館も公園もなく、自然が私の遊び場でした。祖父から季節の読み方や道具の作り方、罠の仕掛け方を教わりました。体当たりで学ぶうちに、やがて川エビや魚、山菜を自分の手で捕まえられるようになりました。家の前の川や裏の山は最高の学習スペースでした。自然の中にはたくさんの素材があっても、人が作った道具はほとんどありません。だから、ないものは自分で作る。この、先人の知恵を借りながら工夫する即興の精神が、私の幼少期を形作りました。同世代の友人に囲まれ、優しい近所の人々に支えられて、本当に幸せな日々を過ごしました。
それでも、その世界が時々狭く感じられることもありました。町の境界線が、私の宇宙の限界を決めているようでした。そんな私の世界を、インターネットとコンピュータが一夜にして広げてくれました。たった一度の検索が、まだ見ぬ場所、最先端の研究、工程が視覚化された魅力的な科学の世界へと私を導いてくれたのです。特にプログラミングには魅了されました。頭の中のアイデアが、コードを通じて画面上で現実のものになる。ICTは私の世界を劇的に広げてくれました。
町の端にある小さな保育園から、より大きな小学校へ。それでも私はもっと先へ進みたかった。私は一人で町を出て、松山の中学校に進学することを選びました。私の世界は広がり続けました。友達を誘って出かけ、歩き、自転車に乗り、バスやフェリーを乗り継ぎ、時には泳いで、県境を越えて山や海へと向かいました。毎日がエキサイティングでした。幼い頃から、新しい世界に触れることほど私をワクワクさせるものはありませんでした。
高校生になると、私はICTの力を活用して、様々なプロジェクトに取り組みました。
そんな高校時代、私はある児童養護施設を訪れました。そこである男の子が、私が持参した科学の本に夢中になり、目を輝かせていました。その瞬間、学びは誰にでも本物の笑顔をもたらすことができるのだと確信しました。一冊の本、一度の学習体験が、困難な環境にある子どもの表情を明るく変えることができる。その光景を目にして、かつて私の世界を広げてくれたのと同じ喜びを、もっと多くの子どもたちに届けたいと強く思いました。
資源には限りがあります。私の町には図書館がなく、すべての場所にすべての知識を置くことはできません。だからこそ、テクノロジーが世界を変えるものであり、現に変えつつあるのだと信じています。インターネットやAIは、より多くの人々に知識を届け、新しい世界への扉を開くことができます。すべての人に教育を届けるためには、革新的なテクノロジーと、それを使いこなす力が必要です。その強い信念を胸に、私は工学を学ぶために東京大学に推薦入試で入学しました。
大学では活動の幅を広げました。能登地域では、NPOや学生団体と協力して、地域格差に対処しながら高校生の支援活動を行いました。電通の社会課題プログラムでは、学術、テクノロジー、環境、歴史、スポーツなど、多様な分野を探究しました。また、教育の基礎について学び議論するために、東京大学で自主ゼミ「探究学習を考える」を立ち上げました。
その頃、のちに現地コーディネーターとなる友人の笠井凜心が、留学中に見たヨハネスブルグの学校の様子を共有してくれました。同じ地域にありながら、ICTや豊かな学習にアクセスできる子どもと、そうでない子どもがいました。私自身も調査を行い、これらの格差の背景にある構造的な原因と、それが子どもたちの未来に与える深刻で長期的な影響を明らかにしました(詳細は 「ヨハネスブルグにおけるICT教育格差と国際比較」(PDF) を参照)。
私は行動を起こさなければならないと感じました。もしICTが私の人生を変えたのなら、今度はその力を次の世代に届ける手助けをすべきだと。このアイデアを共有すると、ICT、国際協力、グローバル問題、教育に関心を持つ多くの友人が集まってくれました。彼らのサポートと助言を得て、私たちは学生団体「Ubunture」を立ち上げました。かつて自然が教えてくれたように、望む未来がまだそこになければ、自分たちの手で作り出せばいい。南アフリカでの本格的な活動に向けて準備を進める今、この精神が私たちの活動の核心にあります。
21世紀になっても戦争や対立が絶えないのは、人々がお互いの世界を本当には知らないからだと私は考えています。知ることは人にとって欠かせない力であり、本質的に楽しいことです。自分の知っていることとは異なるものを発見し、自分とは異なる人々に出会うことは、深く興味をそそられます。困難な時に自分だけの小さな世界に閉じこもってしまうと、生活が難しくなります。だからこそ、私は世界を広げる力を届けたい。単にGoogleで検索したりTikTokを見たりするだけでなく、ICTを自分自身の手で使いこなす力です。子どもたちにその力を届けること――人生のスキルとして、また他者を理解する知性として――が私の人生の目標です。このプロジェクトは、その夢への第一歩です。
Ubunture創設者:澤近大地